那須岳


不思議な不思議な因縁のお知らせ 東京都あきる野市在住 A.Mさん
   私がこの道に入信いたしましたのは二十才のときです。学生時代「いじめ」に遭い、あまりのことに、両親や先生にもなかなか相談できず、一人で悩んでいるうちに、心を病んでしまいました。
対人恐怖症から、うつ病のようになり、学校へ行く支度をしても、どうしても玄関から外へ出ることができなくて、結局一年半以上も引きこもりの生活が続きました。
 このままではいけないと、一大決心をして、アルバイトに出たものの、なかなか仕事に集中できなくて、辛い状態がまた二年くらい続いた時、母方の叔母から「良い神様があるから、そこへ行きましょう」と、誘われました。それが縁で、初めて親神様にお参りさせていただいて、神様のお話を聞かせていただきました。
 その日はちょうど、その先生のお宅の個人祭の日でしたので、私達の他にも、信徒さん達が何人も見えていました。不思議な事に、人嫌いの私が、ちっともイヤな感じがせず、初対面の方々ばかりなのに、ほのかに懐かしく、すっかり打ち解けた気分になっていました。
こんな事は初めてでした。
「どうしてなんだろう。不思議な神様、不思議な人達・・・」そう思った私が、ふと、神様の下の机のようなものの上を見ると、朝夕のお勤めの言上の言葉が書かれた 紙が乗っていました。それには「おうかんみち信徒をはじめ、この世のすべての人々を無事無難に・・・」と書かれてありました。 思わず「うわ−、この方達は、毎日毎日、自分達のことだけではなく、この世のすべての人々のために祈っておられるのか−。すごいなぁ。なんて大きな神様、なんて大きな祈りだろう」なんて、感動してしまったんです。
「この世のすべての人々って、私も含まれているのかなぁ。 私も、この祈りと神様に、知らないうちに守られていたのかしら・・・。
もしかして、今、ここに私が来られたのも、この神様と、この方達が毎日祈っておらてる声に導かれたのかしら。
だから私、初対面の方達なのになつかしいのかも知れない」と・・・。そして、とにかく不思議な所だな−と思いました。
もう、おうかんみちは、朝夕のお勤めだけでもすばらしいと思います。
 それからその先生のお家に運ばせていただくようになったんですけれど、何日目かに、お宅に行った時に、先生の奥様から「私、これからあなたのことを娘と思うことにするからね。だからあなたも私の事をもう一人のお母さんと思ってね」
と言っていただきました。その一言を私が、どんなに嬉しい思いで聞いたことでしょう。
その頃、私は自分のことを「頭もおかしくなって登校拒否や、引きこもりなんかして、どうしようもない問題児になってしまった。
こんな私なんて、生きていても何の価値もない人間なんだ」と思って落ち込んでいましたし、実際、近所のおばさん達からも、あからさまに「あ−、ウチの子が、あんな風にならなくて良かったわ」などと言われていて、「やっぱり、誰だって、こういう問題児の親になんてなりたくないだろうな」と思っていました。 それなのに、自分から進んであなたの親だと思ってほしいなんて言って下さる人がいるのかと思うと、とにかく嬉しくて信じられなかったですね。それ以来、本当に御夫婦ともに、娘同様に可愛がって下さって、どこに行っても「ウチの娘ですよ」なんて紹介して下さいます。私の方はいまだに、何の取り柄もない不出来な娘なのに・・・。
やはり、このご縁も、親神様のお優しいお計らいだと思っています。これからお話しさせていただきます体験は今から二年前の五月の出来事です。
 弟夫婦から電話が来て、潮干狩りに行かないかと誘われました。横着者の私は「う−ん、アサリなら、わざわざ遠くまで取りに行くより、近所のス−パ−で買った方が 安上がりでいいのに・・・」なんて思ってしまいましたが、弟夫婦の「木更津なんだけど・・・」という一言で私の心は動きました。 以前、修養会で「おうかんみちの扇の理」や「三種の神器」の章を教えていただいていた時、日本武尊のお話を聞かせていただいたことを思い出したからです。 その日本武尊が、亡き妻、弟橘媛(オトタチバナヒメ)を思って、木更津に佇んでいたというシ−ンが、とても印象深くて、ぜひ、そのゆかりの土地に行ってみたいと思ったのと、潮の満ち引きは、月の引力の影響で起きると教えていただいていたので、親神様のお造りになった、この自然の不思議を実際に行って、見てみて、一日を楽しんでこようと思ったのです。
けれど、まさかそこでもう一つ、親神様の魂助けの不思議まで体験させていただけるなんて、思ってもいませんでした。
 その日、私は潮干狩りに行って、貝と一緒に幽霊まで家に持って帰ってしまったのです・・・。
その朝、私が木更津に着くと、浜は潮干狩り客でいっぱいでした。私は、潮がグングン千いて海の底が表れていくのも面白く、それに、沖へ行った方が空いているし、 大きな貝が採れるとい聞いて、どんどん沖に歩いていってしまいました。かなり歩いてから振り返ると、はるか遠くに浜の売店が見えました。最初は私も弟一家と一緒に同じ所を掘っていましたが、あちこち場所を変えて掘っているうちに、だんだんバラバラになってゆき、気が付くと私は一人になっていました。
「今度は、どこを掘ろうかな」そう思って、あたりを見回すと、他の場所は人でごったがえしているのに、 その一角、十メートル四方ぐらいだけ、誰も掘っていない所があるのです。 「あれ?もう、誰かが掘った後なのかしら」
と思って行ってみると、全然掘られた形跡もなく、所々に私が見た事もないような海草が生えていました。 それは、細くて、長くてまっすぐで、みどり色にツヤツヤと光り、まるで若い女性のきれいな髪の毛のようだ、 と思いました。
ためしにそこを掘ってみると、大粒のアサリがゴロゴロ出て来て、私は、「うわ−。私は何て良い場所を見つけちゃったんだろう。今まで誰も、ここを掘っていなかったのは、何てラッキ−なんでしょう」と、大喜びで、まるでそこを一人じめしたかのように掘っていました。
どうしてそこだけが誰もいなかったのかなんて全然考えませんでした。
私は、初めて潮干狩りをしたのに、思いもかけず大漁だったので、大得意で家に帰り、 「こんなにたくさん、家だけじゃ食べきれない」とお隣りの家にまで、お裾分けをして御機嫌でした。
塩水を張った容器にアサリを入れて、「一晩塩抜きをすれば、明日は朝からアサリのお味噌汁、そして夕食はアサリづくし!」なんて思いながら、寝る前の歯磨きをしていると、ふっと庭に人の気配を感じました。
既に十一時を過ぎていたので、「こんな時間に庭に人なんて来るはずないのに」と思い、窓から外を覗いて見ますと、なんと、雨も降っていないのに全身ズブ濡れで、白っぽい着物を着た若い女性が、横向きにうつむいて立っていたのです。
思わず「ああっ」と驚いてしまいました。すると、その声に気付いたのか、女性がこちらを向いて顔を上げました。
その顔は、まっ白で、ぐっしょり濡れた長い髪が頬に貼り付いていて、何とも言えない、うらめしそうな目で私を睨んだかと思うと、ス−ッと消えてしまいました。私は歯ブラシをくわえたまま、しばらく呆然としていました。
心の中で「あぁ、幽霊見ちゃった、幽霊見ちゃった」と繰り返しながら・・・。でも、もう夜も遅いし、両親を起こしても悪いし、そんな話をしたら嫌がるでしょうから、もう黙って寝てしまおう。 あれは、目の錯覚だったと思えばいいのだからと、ドキドキしなが藍z団に入って寝てしまいました。
けれど、その晩、怖い思いをしたのは私だけではなかったのです。両親も、それぞれに奇妙な体験をしていたのです。
父は、布団に入ってウトウトしていた時、枕元に人が来て、自分の顔をジ−ッとのぞき込んでいるような気配を感じたそうです。
驚いて起き上がってみても誰もいません。 隣の布団では妻がスヤスヤ眠っているし、「気のせいだったのか」と思い、また横になると、もう一度誰かが父の顔をのぞき込むのです。そして今度は、その人の長い髪が、たしかに父の顔に触れたそうです。
父は再び、ガバッと起き上がり、部屋中を見回しても、やはり誰もいなくて、「変な事もあるものだなぁ」と思ったそうです。
ちょうどその頃、母もおかしな夢を見ていたそうです。 夢の中で母は海辺に立ち、戸板に乗せられた若い女性の遺体が運ばれて、目の前を通り過ぎていくのをじっと見ていました。 それが夢とは思えないほど生々しくて、目が覚めてからも何だか海の匂いがしたそうです。
そんなことで、次の朝の食卓では、三人ともムッツリとごはんを食べていました。
それに、どういうわけか、きのう砂を吐かせようと塩水に入れておいたアサリが、一つも口を開いていませんでした。
砂抜き出来ていない貝では、お味噌汁に入れることも出来ません。
母が「こんなことは初めてだわ。塩水だって、いつもと同じようにしているのに、何が悪かったのかしら」と、しきりに気にしていました。
そして、朝ごはんを食べ終わる頃、隣りの奥さんが回覧板を持って来て、
「きのう頂いたアサリなんだけど、私、砂抜きに失敗したらしくて、一個も口を開いてくれないのよ。
お宅では塩かげん、どのくらいにしているのか教えてくれない?」と聞いて来るんです。
その方だってもうベテラン主婦です。私なんかより、もっと貝の砂抜きをやってきているのに・・・。
「まあ、二軒とも貝が口をあかないなんて変な事ですね。まさか、きのう取って来たばかりの貝が全部 死んでしまったなんて考えられないし、水を替えて、もう少し様子を見てみましょうか」ということになりました。
私も何だか心配になって来て、弟夫婦に電話して「あなた達の採って来た貝はどうだったの?」と聞くと、
「貝はふつうに砂抜きをして、もう食べちゃったわよ」と言われました。
なぜ、私の採ってきた貝だけが口を閉じたままなのか、その時はまだわからずに、がんばって水を替えてみたりしましたが、夜になってもアサリは口を開けてくれませんでした。
 そして、二日後の夜、もう十一時近かったと思います。私と母は、居間でテレビドラマを見ていて、ちょうどそれが終わった頃でした。
先に寝室で休んでいた父が大声で私達を呼びました。いったいどうしたことかと、母と駆けつけると、父は「俺が寝ていると、布団の上を女の人が、行ったり来たり歩いていて、怖くて眠れない。お授けをしてくれ」と言い「おまえが海へ行ってから変だ。ゆうべも変な事があってな」と自分の体験を話しはじめました。 私もびっくりして 「実は私もゆうべ庭に幽霊が居るのを見たの。海で死んだ人みたいに、びっしょり濡れていた」
と言うと、母も「私も海で自殺した人だと思うの。夢で見せていただいたのよ」と言ったのです。
親子三人、ともに知らされていたなんて・・・。と、皆で顔を見合わせ驚きました。
とにかく、何とかしなければ、このままでは今夜眠ることが出来ないと、三人で相談しましたが、もう夜中、十一時を回っています。
先生のお宅や地区教会に駆け込むことの出来る時間ではありません。かと言って、これから先生に電話して呼びつけるなんてことも、とてもじゃないけれど出来ないよ。あまりにも迷惑だもの。と、しばらく電話の前を行ったり来たりした後
「とにかく今は三人で親神様にお願いをして、その女性の御霊様に、お鎮まりいただけるように、 お願いしてみようよ」ということになりました。
三人で心を落ち付けて御神前に座り、一生懸命お願いいたしました。
「親神様、甘露台様、きのうから、これこれこういう事で、私達はこのままでは怖くて眠ることが出来ません。
いったいどうしたらこの御霊様にお鎮まりいただけるか教えてください。どのようにさせていただければこの御霊様が納得して鎮まって下さいますでしょうか。どうか助けて下さい」
そう言上させていただいた途端、スッスッと畳の上を歩く音がして、あの女性が、私の隣に立つ気配がいたしました。
私は全身がス−ッと冷たくなって、あわてて 「お母さん、来てる。あの人が、私の横に立ってる」と言いました。
母も、姿は見えなくても気配を感じたらしく 「じゃ、その方にお聞きしてみましょうか」と言い、二人でいろいろと話しかけてみましたが、
その女性は苦しそうに首をふるだけです。そのうちに母が 「親神様も、あなたを助けたくて引き寄せて下さったんだと思いますよ。
私達のような者でも、何かあなたのためにさせていただけることがあったら、、何でもさせてもらいますから、何かおっしゃって下さい」
というようなことを言ったんですね。 するとその女性は泣きながら 「私は罪を犯しました。その罪は、女としての罪です。そして、家族の平穏な暮らしを守るために、誰に責められても、その事を言いませんでした。
私は貝のように口を閉ざしたまま、決して口を割らずに、一人でその罪を背負って死んだのです。
だから、あの貝たちは一つも口をあかないのです」とだけ言って、消えてしまいました。
私は、その事を母に告げて、しばらく呆然としていましたが、とにかく、その女性の事を神様にお願いしなければと、また、御神前に向かいますと、今度は親神様からお知らせをいただきました。 親神様は、その方の身に起きた一生の出来事を教えて下さいました。
その話はこうです。
 今よりずっと昔の事です。
その女性は、海辺で海産物を採って暮らしている家に生まれ、家族でそういう仕事をしていましたが、その家は男の子がいなくて、その女性のお姉さんが、お婿さんをもらったそうです。 そして、その人と一緒に仕事をしているうちに、無理やりされたのかどうかわからないのですが、その義理のお兄さんと男女の関係になってしまったそうです。 恐ろしい事になってしまったと回りに隠して悩んでいるうちに、何と、妊娠してしまったのです。 妊娠に気付いた御両親やお姉さんが 「誰の子なの、相手は誰か話してごらん。そしたら、その人と添わせてあげられるように何とかしてあげるから、相手の名前を言いなさい」と 何回も問い詰めました。 でも、どうしても言えなかったのです。
私が本当のことを言ったら、家族がメチャクチャになってしまう。お父さんも悲しむ、お姉さんも苦しむ。
私は、何という罪を犯したのだろう。私さえ黙って死んでしまえば、大好きな家族が、平穏に暮らせるんだから。
その女性は、そう思いつめて、自分だけで罪を背負って、身ごもったまま海へ入って自殺してしまったのでした。
その話を聞かせていただいて、私も、父も、母も、泣きながら、その女性の慰霊をさせていただきました。
そして、本当に、この神様はすごい神様だと思いました。 確かに、その女性は、色情で過ちを犯し、自殺だなんて、親神様から借していただいた大切な命を自ら絶つという、良くない事をしてしまいました。 だから、すぐには昇天できなかったのでしょうけれど、でも、親神様は、その方が、両親にさえ打ち明けられずに、たった一人の胸に抱え込んでいた苦しみや、悲しみを、ちゃんと見ていて下さって、最後には、その方のかわいそうな魂を救い上げて下さったのです。 誰も見ていなくても親神様は見ていて下さっている。誰も知らなくても親神様は、何でも知っていらっしゃる。 まさに見抜き、見通しです。
 親神様はこの世界に人間を創造なされてから、ずっとず−と、私達人間子供一人一人の魂を見守り、育て、導いて下さっていると聞いておりますが、その親神様の暖かい眼差しが、いつも私達の上にあるからこそ、私達人間は、安心して生きていけるのでしょうか。それに、このお道は魂助けの道とは聞いていたけれど、本当にそうなんだ。 この偉大なる親神様のお道だからこそ、魂まで救っていただけるのだと思いました。
そして、慰霊が終わり、私は「やれやれ親神様のお陰様で、やっと今夜は眠れそうだ」と思って、お休みの前の歯磨きに行ったんですけれど、台所の前を通ったら、誰も居ない所で、かすかに水音が聞こえてくるんです。
「ええっ、また、どうして?」
私が、あわてて飛んでいって台所の電気を付けると、何と、今まで全然口をあけなかったアサリが、一斉に口をあけて、ベロを出したり、管を出したりして、潮なんか吹いちゃっているんです。その音だったんですよ。 私は、あわてて両親を呼び、親子三人でしばらく貝に見とれてしまいました。 その時、父がふっと「あ−、今まで口を閉ざしていて苦しかったんだろうなぁ。やっと楽になれたんだよなぁ」って、つぶやいたんですね。
次の日、隣の奥さんも、大喜びでやって来て 「アサリが口を開いてくれたのよ。もう、ピュ−ピュ−ピュ−ピュ−潮を吹いて、バケツの回りの
床がびっしょりになってしまったの。さすが、天然ものはワイルドよね−」なんて、大笑いして帰っていきました。
なんとも不思議でしたが、あの小さな貝達でさえ、我が子を一人でも多く救いたいという親神様の御心や、苦しかったあの女性の心を、私達に伝えようと、一生懸命、不思議を見せてくれようとしたのでしょうか。
 どんなに小さな生き物でも、この世界のすべてのものの創造主である親神様の御心が込められていて、ふだんの時は私達には見えていなくても、時期が来れば、それを表に出す・・・。あの貝が見せてくれた事は、この世界が、親神様のお造りになったすばらしい世界である、という事の証だったのでしょうか。


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